開院のご挨拶

産婦人科医・臨床心理士 吉野一枝
2003年8月 記

8月18日いよいよ診療所がオープンしました。実はこの春まで、自分が診療所を開くなんて思ってもいませんでした。自分のやりたいような医療を実現するためには結局自分でやるしかないのかな、とは漠然と考えてはいましたが。 それが数々の偶然とタイミング、皆様の暖かいご支援により、この日を迎えることができました。感謝の気持ちでいっぱいです。

私ははじめから医者の道を進んできたのではありません。高校を出て、アルバイト(今でいうフリーターですかね)をしているうち、広告業界(これはギョーカイ?)で仕事をするようになり、約10年間というもの社会人として働いておりました。それがなぜ医者に?と思われるかもしれませんが、簡単に説明すれば「自分にしかできないこと、自分の人生にとってやりがいのあること、が医者の仕事だと思ったから」ということでしょうか。

ところが実際医者になってみたら、思っていたのとずいぶん違うことがたくさんありました。もちろんやりがいのある仕事であることには変わりありません。悩みつつも医者になって10年が経とうとしています。今回自分の診療所を開設し、少しでも自分の理想の医療が実現すればと願っています。

理想の医療って?
そう、一口には説明できません。でも皆さんも日常医療に対して「おかしいな」「こんなふうだったらいいのに」というご意見があるかと思います。例えば、病院に患者さんが集中し、「3時間待ちの3分診療」だとか、求めている説明が聞けないとか、どこに何を相談してよいかわからないとか、医療費の問題とか。

でも一番問題なのは、医療の主体が患者さんに無いことではないでしょうか。だいぶ変わりつつあるとはいえ、日本の医療はピラミッド構造です。ピラミッドの頂点に医者がいて、その次が看護師、医療技術者、事務職、そして一番底辺が患者、という構造。この体制だと、どうしても「病気になったときは病院に行って医者に治してもらう」ということになります。

え?当たり前と思いますか?私はここに問題があると思います。病気になるのはその人の人生そのものです。ですから主体は患者さんです。「医者に治してもらう」のではなく「医者のアドバイス、技術にサポートしてもらいながら自分で治す」というのが私の考える医療です。

ですから皆さんにも主体的・積極的に自分の健康について考え、医療に参加していって欲しいのです。 もちろん日本の医療問題は根深く、簡単ではありません。でもこの開院を小さな一歩として、皆さんとご一緒に考え、実践していけたらと願っています。